希望のかなた(The other side og hope)
2018.01.27
くらい船底、積荷の石炭から顔を出す男
夜中の12時、鍵と指輪を置いて家を出る男
無言の男ふたりのシーンがしばらく続いて、、、初めて聞こえた歌の鮮烈さ!
♪ ああ母さん ランプを明るくして
もうすぐこの世をあとにする俺に
どうか買ってくれ シャレた白いスーツ
冷たい土の下で眠りにつく俺に ♪
初めて見たアキ・カウリスマキ監督の映画『希望のかなた(The other side of hope)』はこうやって始まりました。
シリアの街、爆撃にさらされるアレッポからトルコ・ギリシャ・中欧を超え、遥か北の国フィンランドへ流れ着いたカーリド。彼の願いは一つ、ハンガリー国境ではぐれた妹と再会すること。
現実を無視した勝手な解釈で難民申請を却下する国家組織。
愛国者を名乗るネオナチのグループ。
ここでもまた、世界の彼方此方で見かける不寛容が広がっていました。
でも、その世界の其処此処にはカーリドに手を差し伸べる人がいました。
それは通りすがりの浮浪者だったり、潰れかけのレストランのオーナーだったり、、、
これは今、ヨーロッパの街で毎日のように起こっている一つの物語。
いつだって、国家とは別の物語(history)をつくる人びとが市井にはいてて
そんな人びとのいる場所に、希望は生まれるんじゃないかな、と思いました。
小津安二郎に影響を受けたというカウリスマキ監督の作品は
無駄な表現を削ぎ落とした独特なもの。
計算し尽くされた舞台上に最小限の台詞、無駄な動作も過剰な演技もなく
結果、仏頂面の俳優がなにやら様式化されたような動きをする、そう、どこかお能にも通じる世界。
それでいて、どこか可笑しいんです。
見ているとじわじわとユーモアが伝わってきて、思い出し笑いをしてしまうような。
難民という重たいテーマのはずなのに、
思いがけず希望と勇気とユーモアが残る素敵な作品でした。
"そんな企みはたいてい失敗に終わるので、その後に残るものがユーモアに彩られた、正直で少しばかりメランコリックな物語であることを願います。一方でこ
の映画は、今この世界のどこかで生きている人びとの現実を描いているのです。(アキ・カウリスマキ監督からのメッセージ)”