2014.06.30
~従来のピアノのレッスンで、対位法の練習の第一歩として与えられる。バイエル、ブルグミュラー、ソナチネとホモフォニーをずっと習ってきて、いきなりこのバッハのインベンションを弾かされて壁に直面する人は数知れず。コンクールの課題曲になることも多い。兄貴分である“平均律クラヴィール曲集”は音楽大学の入試曲として燦然と君臨し、一生をかけて勉強を強いるほどの価値を持つ。巨匠達も全曲録音を残している。~
肖像画のバッハは気難しそうです。
質素、倹約、勤勉…。
バッハ、イコール苦しみ???
そういえば知り合いのお子さんが3声のインベンション(シンフォニア)を今習っていらして「声部ごとにレッスンで暗譜しているのですがもう泣きながらやっています。」と、おっしゃっていました。 私も子どもの時初めてのバッハとしてこの曲集に出会いましたが、真っ黒に日焼けして毎日運動場で部活動をやっている田舎の子どもの私に、その良さが分かるはずもありませんでした。
バッハの技術面での難しさの1つ目は指が完全に独立していないと弾けないところです。だからといって音の粒を揃えて早く動けばいいというものでもありません。右も左もメロディー(3声以上では手の数より多い!)なのですから、指も耳も頭も目もフル回転です。複数の声部を同時に聞きながら歌わせるのです。
2つ目は腕のゼスチャーや不必要な強弱などの小細工をせず、音自体で旋律を歌わせないといけないところです。自分のバッハを録音して聴いてみるとただの棒弾きになっていてがっかりすることばかり。上手下手が全部ばれてしまいます。やはり巨匠が弾くバッハはちゃんと自然な音色の抑揚があり、人間味溢れる音楽が聞こえてきます。
指、耳、音楽性、全てを徹底的に鍛える?! だからこそ、どのピアノの先生もバッハのレッスンは細かく(先生によってはかなり厳しく!)なってしまうのだと思います。
でも何よりバッハを本当に必要とするにはある程度年を重ねないといけないかもしれません。
小さい頃おばあちゃんに
「どうしていつも仏壇に拝みよると?」
と、聞いたらこんな答えが返ってきました。
「あのね…あの世にだんだん近くなると毎日拝みたくなるとたい。」
「ふ~ん…」
おばあちゃんはとても優しい笑顔でした。
祈りにも似た敬虔な音楽…
装飾音符の織りなす微妙な時の移ろい…
その中に身を浸すことがバッハの最大の魅力かもしれません。 やはりバッハが好きな人は、ピアノのメカニックな効果よりもピアノの真髄、音楽の内面に深く切り込む表現をするタイプの人が多いと思います。ピアニストにもバッハのレパートリーが多い人は他の作曲家の作品を弾いても、いい音楽をする人が多いです。 バッハを得意とするアンドラーシュ・シフは、「起きたら朝食前に最低一時間バッハを弾きます。それが自分の心と健康に不可欠なのです。」と言っていました。
私もそうなりたい…
やはり、バッハの楽譜は一日に一度は開けてみずにはいられないです。
http://www.kawai.co.jp/pnet/602574/topics/48239/(私の好きな曲⑨ 蟹のカノン「J.S. Bach - Crab Canon 」)もご覧下さい。