2026.02.15
シェイクスピア作品の原文には音楽と同じようにリズムがあります。
それは弱→強|弱→強|弱→強 |弱→強|弱→強というアクセントの繰り返しが意図的に使われているからです。
例えば有名なハムレットの “To be, or not to be, that is the question.”にも見られます。更にto beを反復することで、その音楽的な心地よさが増幅され、舞台上でもリズム感を持って語ることができるのです。時には句読点を無視してでもリズムの方が守られて俳優がセリフを発することもあり、畳みかけられるリズムと重要な単語の強調によって、言葉は劇的に迫力と説得力を増します。
この構造は正に音楽と同じです。ひとつのメロディーを形作る音たちは一定のテンポで流れていき、反復したり、曲の山場では強調されたりします。 歌うように語る、語るように歌う…。
言葉と音楽は切っても切れない関係にあるのです。
ところがこれを日本語に翻訳しようとすると、英語と日本語の構造の差の溝が深く横たわってきます。
日本語は基本的に一音節に一文字なので英語に比べてリズムを作りにくい特徴を持っています。だからといってリズム感を出そうと音読みの単語を多用すると、今度は口頭での意味が分かりづらくなってしまいます。
シェークスピア翻訳が難しいと言われる理由のひとつは、この原文の音楽性の再現です。原語が持つリズムによる表現の翻訳には、熟練と知識、高度な感覚が必要になってきます。
翻訳はその時代の言葉に込められた文化的背景を汲み取り、しかも詩的な美しさを損なわないという難しさがもともとあります。更に舞台の台本となると、言葉のリズムや、耳で聞いた時に意味が聞き取りやすいこと、俳優が感情をこめやすいようにする必要性などの他の条件も加わってくるのです。
ハムレットの “To be, or not to be, that is the question.”の翻訳がたくさんの翻訳家によってバリエーションが生まれ、舞台でも多くの演出家と翻訳家が様々な試行錯誤を重ねながら作品を手がけてきた背景には、その難しさとそれゆえの面白さがあるのですね。
そんなことを考えながらレッスンをしていたある日、20代のAちゃんがお気に入りのJ-Popを聴かせてくれました。私はその歌詞を見てビビビと雷に打たれたのでした…。
ラップ寄りのJ-Pop。「へえ、歌詞には英語が多いんだー、カッコいいー。」と、軽い気持ちで歌詞を見た瞬間、そこには普通の日本語が。でも聞こえてくるのは英語にしか聞こえないノリのいいリズミックな言語…。
“SUMMER DAY”と言っているかと思えばそれは“朝まで”(アッサーマーデー)という日本語!
実際の歌詞ではなく私が作った例えで言うと『え、ん、そ、う、し、ま、す、』という当てはめ方ではなく『エンッソーシマスヮタシpあーノヒクヨー』(演奏します私ピアノ弾くよ)みたいな日本語の入れ方になっていて、耳にはまるで英語!
カッケーーー!
Wow! J-Pop はシェークスピア問題をもうとっくにクリアしていました。
J-Pop スバラシ。
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