2025.06.30
ピアノを弾きながら自分の顔の表情を気にすることはありますか?
ふと思い出すのは最近亡くなったピアニスト、アルフレード・ブレンデル。彼は音楽に没入すると、深遠な音楽の世界から真実の音楽をそっとすくい上げてくる時に、歯科医院でかみ合わせのチェックをするときのようにぐりぐりとこすり合わせていました。
ランランも美しい音色でロマンティックな演奏をする時の顔の豊かな表情には、誰もが思わず目が釘付けになるでしょう。
小山実稚恵さんは、よどみのない指さばきと共に、たたえられているその理想的な美しい微笑みが聴く人をうっとりとさせます。
さて、飛鳥時代に聖徳太子が母親のために建立されたと伝えられている中宮寺に、国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音)がおわします。その微笑みは、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナリザ》、エジプトの《スフィンクス》と並んで【世界の三つの微笑像】のひとつに数えられているそうです。
美しい微笑みはリラックスした身体の状態から生まれるのでしょうか?じっくりと観察すると、まず惹きつけられるのは”反り腰になっていない身体にとって楽な座り方”です。横から眺めると、背中が少しだけふんわりとカーブしています。あえて胸を張らず背骨のおなか側で体重を支えるのは理想的な姿勢と言われています。超絶技巧で知られるピアニストのアルゲリッチにも演奏中には背中に同様のカーブが見られ、身体の重さが腕や指先にまでうまく乗っていることが見て取れます。
次には、頬に添えた手や、足にふわりと置かれた手のナチュラル感にも注目したいところです。無理な力が入っていると、指は直線的になったりいびつに曲がったりしますが、ここでは自然なカーブを描いており、内側から湧き出る静けさとやさしさが漂います。ふわっと鍵盤に置いた理想的な形と同じです。
また後方から見ると、上半身の重みを背骨と骨盤の真ん中でしっかり受け止めているのがわかります。肩や腰の筋肉は緊張とは無縁、見事に緩んでいます。
美しい笑みを浮かべながら優雅な美しい音で演奏するには、この完璧なリラックスもヒントになりますね。良い姿勢で柔らかく微笑んで演奏したいです。ニコッ♪
熊本市
東区健軍ハートピアノ教室
© Seiko Kai 2025