2025.02.15
クラシック音楽には長調と短調があります。主和音といってその曲の核となる和音は長調なら長和音、短調なら短和音が使われます。ハ長調でいうと、ドミソが長和音でド♭ミソというようにミに♭が付くと短和音です。
そして一般的にレッスンでは、ドミソは長調でうれしい、明るい、そしてド♭ミソは短調で悲しい、暗い、と習うのですが、音楽とはそう一筋縄ではいきません。
例えばショパン作曲の練習曲《別れの曲》と呼ばれる作品10-3はピアノを習った人なら一度は弾いてみたい曲ですが、さてこの曲は長調でしょうか短調でしょうか?
出だしからメロディーラインの音楽が染み入ってきます。もちろん《別れの曲》という題名はショパンがつけたわけではありませんが、なぜか心の奥がジーンとして、美しすぎる音楽の輝きに涙しそうになります。
この感情は喜びなのか、悲しみなのか?
人は悲しみのどん底でも涙を流しますが、幸せに包まれても究極の美しさに対しても涙を流します。音楽にはそれと同じような現象があるようで、長調、短調、とひとくくりにできない感情があります。
生徒さんにクイズをすると「短調だと思います。」という答えが返ってきますが、なんと正解はホ長調です。
反対に、モーツァルトの《トルコ行進曲》は皆さん自信を持って「長調!」と答えますが、イ短調でできています。途中イ長調を経由して嬰ヘ短調が悲しく駆け抜けるのに、なぜか明るく聞こえみんなを笑顔にしてしまうという不思議な傑作です。
ショパンと同時代の作曲家リストは長生きで、晩年は無調の曲へと作風をかえていきました。20世紀に入るとドビュッシーは全音階を使って調性(長調か短調かの特徴)をぼかしていき、シェーンベルクは12音技法という技法を使い調の制約を受けない無調音楽を確立、より深い心情描写が模索されていきます。
熊本市
東区健軍ハートピアノ教室