私の好きな曲③ スクリャービン 前奏曲「Scriabin Prelude Op. 37, No 1 」
2013.04.15
「Scriabin Prelude Op. 37, No 1 」
ロシアの世紀末芸術に求められていたのは、芸術家が「芸術を超えたなにものかの存在」であり、芸術がたんなる芸術ではないということでした。当時「神智学」に傾倒していたスクリャービンは今日のわれわれの創造をはるかに超える、桁外れに巨大で、謎めいた存在でした。世紀末ベルギーの画家ジャン・デルヴィルの絵を好み、みずからの作品交響曲第五番「プロメテウス火の詩」(1911年)の総譜カバーにも用いています。
このプレリュードは幻想的で魅惑的です。最初の和音を鳴らしただけで、スクリャービンに手を引かれて違う空間に連れて行かれるよう。催眠術をかけられて、浮遊する気持ちです。音楽そのものが無限の宇宙となって一切を包み込みます。
悲しみをかみしめるようなところも控えめで、次の瞬間には、はらはらと散っていってしまうはかなさ…
ちゃんと「好き」と言ってくれる情熱もあるのに去って行ってしまう… あとに残る深い悲しみと押し殺した慟哭。
彼のメモからの一節です。
「わたしはあなたの意識のなかに狂気への欲求と無上の幸福をめざめさせたい。」
??普通に生活している私たちには全然わかりませんが、スクリャービン独特のあやしさはちょっと危険です。
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