2022.10.18
明夫「今月は10年間のトピックス投稿から選んでお送りしとります、トピックス祭りです。私は司会の明夫。レギュラーコーナーは『当たってくだけて平均律クラヴィーア曲集』です。」
HEART「ツェルニー先生も、レッスンでたくさん使われて嫌われてしまった方です。」
明夫「真面目ないい先生だったけんこそ、いっぱい練習曲ば書きなさったとですなぁ。」
HEART「そしてあの有名な作曲家F.リストの先生です!」
【ツェルニーの練習曲】2022.01.30
レッスン中、生徒さんに「ツェルニーって知ってる?」と聞いてもご存じありません。私はレッスンでほとんど使わないからです。しかし『バイエルピアノ教本』と同じく使い方次第だと考えます。
カール・ツェルニー(1791年2月20日)はウィーン生まれの作曲家。父から最初のピアノの手ほどきを受けベートーヴェンの弟子となりますが、家計を助けるために演奏活動をあきらめ、なんと15歳ピアノ教師となりました。親しみ易い穏やかな教師だったため人気があり、レッスン時間は最高で朝の8時から夜の8時までと一日12時間にも及びました。
私が子供の頃は誰でも何をさておいてもツェルニーの練習曲を順番に弾いたものでした。とにかくある進度に来ると、どのピアノの先生も迷わずツェルニーの作曲した練習曲集を生徒に手渡していた時代です。コンクールや受験曲にももちろん登場。せっせせっせと量産するようにツェルニー先生の練習曲を弾かなければなりませんでした。
その修業は『ツェルニー100番』という100曲もある曲集に始まり、『ツェルニー30番』(30曲)『ツェルニー40番』『ツェルニー50番』『ツェルニー60番』…と続きどんどん難易度を増すという超超大作なのです。 ツェルニー先生曰く「完璧にメカニックを習得していれば芸術作品を完璧に表現できるものなのだ。普通にやっていてもなかなか身につかない技術が、私の書いたこの教則本を使ってみっちり練習すればバッチリできるようになりますよ。」(ツェルニー60番前書きより/大まかな解釈に筆者が変換)
ツェルニーの最初の師であった父親は、息子に勤勉こそが最重要であると教えました。“勤勉”は当時力を持ってきた市民階級の目指す姿そのもの。その時代背景と真面目さで、ツェルニー少年はたくさんの生徒を教え練習曲も書き、その収入で両親を助け生涯独身を通しました。
ピアニストや音大生は子供の頃ほとんど初見でどんどんこなしたという話は聞きますが、耐久レースのようなこの練習スタンスがある一定数のピアノ愛好家からブーイングを買いまして、令和の現在に至ります。
ちなみに『ツェルニー50番』ですが、一曲ごとにクリアすべき技術が書いてあります。
① Beweglichkeit der Finger bei ruhiger Hand(安定した手の状態による俊敏な指の動き)
② Das untersetzen des Daumens (親指をくぐらせる練習)
③ Deutlich Geläufigkeit(クリアで流暢に)
④ Leichte Beweglichkeit im ruhigen Staccato(軽くスタカートした俊敏な動き)
⑤ Gleichheit in Doppelläufen(粒の揃った両手のダブル音階)
…と延々と続きます。第5番までにすでにBeweglichkeit(俊敏な)という単語が二回もあります。また、Geläufigkeit(流暢に)Leichte(軽く)という言葉から、当時の楽器(現代のピアノより軽いタッチで弾ける)に特化していることが分かります。
こんなツェルニー先生の練習曲ですが、ピアニストが第24番 Der daumen auf Obertasten bei völlig ruhiger Haltung der Hand(黒鍵上での親指と手の安定)を、とっても素敵に優雅に弾くのを聴いたことがあります。譜読みが早くてたくさんこなせる人、そして高い音楽性を持っている人にはツェルニーの目指すところを受け止め、その魅力にまでたどり着けるのでしょう。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室