2022.07.29
“サマータイム 暮らし向きは良い
魚が跳ね 綿の木は伸び…
あなたのパパはお金持ちでママは美人
だからいい子ね、泣かないで…”
日が長くいつまでも夜にならない夏の夕暮れ時に思い出すのは、アメリカの作曲家ガーシュインの書いた『サマータイム』です。オペラ【ポギーとベス】冒頭で歌われる子守唄で、いろいろな楽器に編曲されて世界中で演奏される名曲です。
黒人社会の深い悲しみや孤独を描いたこのオペラは、赤ちゃんに優しく歌う冒頭のこの子守歌の後に、犯罪や殺人が起こっていくというストーリーです。
『サマータイム』の歌い方はいろいろですが、“サ~マ~…”という歌いだしにその先の演奏の雰囲気が想像できます。長めに伸ばしたロマンチックな歌い始めは、遠い日へと音楽を紡いでいくようですし、反対に淡々とした歌い出しは、この曲に隠れている諦観がにじみ出るようです。どちらにしても、生きる辛さや孤独がにじみ出る演奏なら、技巧を凝らさなくても自然と音楽の言わんとすることを語りかけてきます。そして作り物、偽物の演奏はすぐ見破られる難しい曲です。
私も遠い日、優しかった祖母に子守歌を歌ってもらった記憶があります。祖母は明治生まれでしたが、「ね~んねんころりよおころりよ…。」の他にもなぜか英語の歌を知っていて、私が「えいごのうた、えいごのうたっ。」とねだると、低いぼそぼそした声で歌ってくれるのでした。サマータイムではありませんでしたが…。添い寝して耳元で歌うその声は、振動や息遣いまで記憶に残っています。技巧を凝らそうとはしない子守唄の自然な歌声は、子供を安心させてすーっと眠らせます。
人は何歳まで子守歌を歌ってもらって眠るのでしょう。誰かにそばにいてもらって安心して眠ることを望むのは小さい子供だけではないかもしれません。
夏至からひと月以上経ちましたが、午後7時半でもまだまだ外は明るい熊本です。冬は同じ時間でも真っ暗なので、レッスンの帰り道おうちの近くまでついていってあげる近所の生徒さんも、日が長い夏は「サヨナラー」と一人で元気に帰っていきました。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室熊本