2022.02.14
深刻さが売りのクラシック音楽ですが、うっとりする歌詞がついている恋愛の歌も多くあります。恋の時代別にご紹介しましょう。
♥恋愛時代
モーツァルト作曲『クローエに』(詞J.G.ヤコービ)は、恋する男性の歌。もう出だしから愛する女性の眼を「青くて明るくてぱっちりしてて…。」といきなり「君がナンバーワン!」のノリで褒めまくりです。「僕は死ぬまで君を離さないよ。」と続き「ぐったりして」と訳されるErmattet、ermattet、ermattetが繰り返し歌われます。「君にノックダウン、ホントもうメロメロ…。」という感じでしょうか。愛の作曲家モーツァルトの傑作としてよく歌われます。
♥婚約時代
プッチーニ作曲、歌劇《ジャンニ・スキッキ》より『わたしのお父さん』(台本G.フォルツァーノ)は、娘を持つ世のお父さんたちの宿命というべき名曲です。歌詞は「私の大好きなお父さん、彼との結婚指輪を買いに行かせて。だめなら河へ身を投げてしまうわよ。お願い、お願い…。」と、いつの時代も変わらない情景が描かれています。どんな困難があろうと結局は好きな人のもとへ行ってしまう結末は今も昔も変わりません。
この曲は大人気ですが、若い歌手よりも、ある程度大人で、声量もたっぷりとある女性が遅めのテンポで余裕を持って歌うのが案外いいと思っています。それも泣きながらではなく少し微笑んで…がベスト。厳しいお父さんも、この余裕の歌いっぷりに娘が大人になってしまったことを感じ、観念するでしょう…。
♥新婚時代
シューベルト作曲《至福》(詞L.C.H.ヘルティー)は、彼女のことが好きでたまらないという曲です。「天国では女神さまが微笑みかけてくれて歌ったり踊ったりしてそれは素敵なところだと神父さんは言うけれど、僕は彼女がいる地上にいるよ。ここで大好きな人と永遠に幸せに暮らすんだ。」とリズミカルなピアノに合わせて歌い上げます。ダンスを二人で楽しく踊っている情景が見えるように楽しく美しい曲です。
♥熟婚時代
プーランク作曲の歌劇《テレジアの乳房》より『Non, monsieur mon mari』(いやよ、ダーリン様/台本G.アポリネール)という曲は、『わたしのお父さん』の未来にある(?)かもしれない恐ろしい歌。「子供は産みたくないの。夫の命令ももうたくさん!私は大臣や数学者になって自由に生きていくの。」自立と自由を求める女性が古風な(普通の?)夫に啖呵を切って、鮮やかなプーランクの転調と共に早口のフランス語をまくしたてます。そして物語はなんと彼女に髭が生えてきて乳房がとれてしまうという奇想天外な展開へ。夫役の男声が掛け合いで入り、「ベーコンを持って来~い。」と叫ぶのも面白い構成です。
恋の行方もいろいろ。他にもモーツァルトの作品に《警告》(詞不詳/娘は大事に鍵をかけてしまっておかないと危険だぞと父親に警告する曲)や《お別れの歌》(詞K.E.K.シュミット/18番まで延々とルイーザとの別れを嘆く歌)などなど…。芸術は恋なしには生きていけないのですね。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室