2020.03.14
~sostenuto ソステヌート…音の長さを保って ~
音楽用語辞典には“tenuto”テヌートにも“sostenuto”と同じように「音の長さを保って」と書いてあります。同じような解説が載っているこの二つの言葉は、イタリア語の辞書を見ると違いがよく分かります。
“sostenuto”とはイタリア語で“支える”という意味の動詞“sostenere”からきていて、下から上に支え持つ感じ。“tenuto”は“tenere”という手で持つ、つかむ、押さえておくという動詞からきていて今度は上から下へ力を加える感じです。音を保つという意味では同じですが、実は方向性が逆になっています。
曲の中で例を挙げてみると…。
ショパン
ノクターンより
7番op.27-1嬰ハ短調
長いサイズのアクセントが多く興味深い。29小節から右手に普通サイズのアクセントと共にtenutoが何度も登場。次第に曲はクライマックスに向かって速度を増し、49小節目でfffと共にsostenutoの指示。同じリズムで書かれていてもtenutoの指示がある個所とsosutenutoの指示があるところがある。(正確には付点の音価が少し違う)sostenutoとtenutoの違いがよく考えて弾き分けなければならない。
ノクターン8番、9番、11番、16番は冒頭に速度記号と共にsostenutoの表示。
特に有名な8番はsostenutoのためのような美しい曲。アクセントも長め。強調にはtenutoではなく、con forza、fz、appassionato、con anima などの言葉。
ブラームス
sostenutoはラプソディーop.79-1、22小節になんとtenutoと共に用いられている。sostenutoしながらtenutoすることになる…。難しい。Intermezzoop.118-6。これでもかと書かれたtenutoがブラームスらしい。(ten.ten.ten.…)
ドビュッシー
legato e sostenuto、dolce sostenuto、sostenuto e marcato等々…。sostenutoに一言付けるのが好み。練習曲集Ⅷ“装飾音のための”
27小節目、右手にtenuto左手はdolce sostenutoの指示。全体的には“柔軟にうねって”という更なる指示。細かく何種類もの指示があり、彼の感じていたものを汲み取って弾くのは至難の業。tenutoは縦型のアクセント記号共にffを放出したり、スラーやスタカートと共に出てきたり、その両方と組み合わされてトリプルで出現したりと大忙し。
作曲家によって同じ音楽用語でも使い方がまるで違います。それぞれの作曲家の持つ音楽言語、スタイルを把握して解釈していかないといけません。
追記…音楽用語はほとんどがイタリア語で書かれています。悲惨な状況のイタリアをテレビで見ると心が痛みます。ポリーニやムーティはどうされているのでしょうか…。
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