2018.02.24
昨年末、85歳で帰天された綾乃夫人の思い出を綴ります。
彼女はピアニストになりたかったのですが、大月家に嫁いで子育てや旦那様の転勤で
忙しい日々をすごしているうちにかなりの月日が経ってしまいました。
50年ぶりでピアノを再開して演奏をするようになってケマル・ゲキチ(ピアニスト)先生のレッスンをうけておられました。
ゲキチ先生のリサイタルでは、最前列の綾乃さんに舞台から先生が親しみのあるアイコンタクトをいつも贈っておられました。
さて、彼女の演奏を聴いた人は、その音に魅了され涙することがありました。
フジ子さんも同じタッチを持っておられますので、この意味はわかっていただけると
思います。
綾乃さんは、フジ子・ヘミングさんのお母さま(大月先生)のお弟子さんで、先生に気に入られ大月家の長男さんとご結婚されたのです。フジ子さんと同年齢で
それこそ子供の時から少女時代、良きライバルとして大月先生のピアノレッスンを
受けておられたそうです。
弘法、筆を選ばず。という言葉がありますが、綾乃さんはどんなピアノでも
その鍵盤から感動の響きを出すことができました。
晩年、本番前に今日もお客様を泣かせてみせる。とよくおっしゃっていました。
50年もブランクがあったはずなのに、どうしてこんなに弾けるのか。
基礎の基礎が本当に出来ていて、指が鍵盤に吸い付いていました。
そして、まごころ(ほかに言葉がないので)が指からピアノの中に入っていくのです。
そんな、大げさなー。と思われるでしょう。フジ子さんが、世界の舞台でひっぱりだこなのが答えです。
綾乃さんも同じでした。
もう、その姿を見ることができません。
亡くなって大きなショックを受けました。
綾乃さんに深い感謝を申し上げ、あのすばらしいタッチを目に焼き付けたので
それを少しでも私のお弟子さんにお伝えします。とお約束しました。