2012.05.23
イエルク・デームスのピアノリサイタルに行ってきました。私が幼少の頃から偉大なピアニストでした。御年84歳!!
樹齢何百年(友人曰く)の不動の幹が、枝葉に魂を送りピアノに伝えているような姿。樹齢を感じさせる少し湾曲した背中だけ見ていると、まさか反対側でピアノを弾いてるとは思えないほど、動いていない。
この日は、ドイツ3大B(バッハ、ベートーヴェン、ブラームス)に加え、モーツァルト、シューマンという素晴らしいプログラムでした。
1曲目は、バッハの「パルティータ1番」。宗次ホールはこじんまりとした、教会の礼拝堂のような落ち着いたところで、まさに教会の響きような音が天井で交差し混ざり合う。あの残響の長さの中で、デムスおじいちゃんは、複雑なポリフォニーを鮮明に弾いておりました。ふぅ‥天にも昇る心地とはあのことでしょうか?!
2曲目、モーツァルトの「アダージョ」。
3曲目、ベートーヴェンのピアノソナタ「テンペスト」。ピアノを弾く人なら皆知っている曲ですが。弾かない人でも、遠い昔、水谷豊がドラマ「赤い」シリーズで弾いて有名になりましたね~(古すぎてハズっ)
この曲は、ベートーヴェンが目が見えなくなり、耳もきこえなくなり、めちゃくちゃ苦しんだ時期の作曲なので内外面に激しさのあるものです。確かに、高齢のデムスおじいちゃんにはベートーヴェンの燃え盛る激しさはありませんでしたが、ベートーヴェンを極め尽くした末、こんなテンペストがあるのだと感動いたしました。若い頃には理解できなかったでしょうね~
後半1曲目、シューマン「森の情景」おじいちゃんの音にぴったりのシューマンらしい優しい曲。
後半2曲目、3大Bの3人目、ブラームスの「6つの小品」は鳥肌立っちゃう位美しい曲ですが、やっぱり鳥肌たっちゃいました。シューマン先生が大好きで大好きでたまらなかったブラームスは、とても優しい曲を作るシューマン以上に美しい、優しい曲を作っています。よく映画音楽になるブラームスですが、この1番も何かにつかわれているのでは?
ラストもブラームス「ラプソディー2番」。普通、この曲を弾いている人を見ると、「難易度高い!」と感じるものなんですが、デムスおじいちゃんはサラサラと指の先で弾きこなしているのです。高齢ゆえの省エネ演奏にも見えますが、目をつぶれば音色にはなんの支障もなく‥ピアノが泣いて喜んでしました。つづく