2012.11.10
先日、「文化を創造する人材の育成について」ということに対して小論文を書く機会がありました。私は、音楽を学ぶことが感受性を豊かにし創造力に結びついていくという主旨の文章を書きましたが、この経験は音楽を勉強する意義について改めて考えさせられるきっかけになりました。その際の文章をもとに、“音楽を学ぶということ”について私なりの考えをまとめてみました。
文化の創造において感受性を高めることが大切だと私は考えています。感受性とは、外界からの刺激を感じ取って心に受け止める能力のことです。雨の音一つとっても、雨戸をたたく音、傘に降りそそぐ音、木の葉からこぼれる音など様々な音があります。それを耳で聴くだけでなく、目で見たり、触ったり……。ただ何気なしに受け取るのではありません。アンテナを張っておくことが必要なのです。自然、また良い音楽・絵画・演劇などの出会い……刺激となるものも様々です。見て・聴いて・肌で感じて、いろいろな引き出しを作っておくことが重要なのです。
では、どのように感受性を鍛えるかというと、訓練することが大事だと考えています。そして、その訓練の一つに音楽学習があるのです。
音楽には、躍動感あふれる曲や悲しく沈んだ気持ちを表現したい曲などいろいろあります。その曲の求めているものも表現していかなくてはなりません。その時に、引き出しのどれをどのように使うかが大切になってきます。たとえ最初はうまくいかなくても、だんだん引き出しの使い方がわかってきます。それが上手にできるようになると、素敵な音楽を作り出すことができるのです。つまり、裏を返せば音楽を勉強するということは、自然に感受性、研ぎ澄まされた感覚を育てていくことになるのです。
今のあわただしい時代、その感受性を高める機会が不足しているように思います。文化を創造できるということは素晴らしいと思います。しかし、なんの努力もなしにできる人はまずいません。私は、音楽を教えることをもって感受性を豊かにする、ということを通じてそのお手伝いを精一杯やっていきたいと考えております。