2016.04.23
今回は「コンペに参加する目的とその条件」について、考察してみたいと思います。
ただし、指導者が違えば当然、色々と考え方の違いもあろうかと思いますので、あくまでも当音楽院においての参加条件と、その基となる考え方という事で、一般論を述べる事が今回の目的ではありません。
参加の目的をどの様に考えるかで、その条件は変わってきて当然なので、やはりそこを論点とした話になってくる事かと思います。
前回「地力とは何か」では、D級(中2以下)以降にスムーズに進級できて、ピアノを一生ものにするには、地力が大切であるというお話をさせて頂きました。
これは言い換えるならば、C級(小6以下)までに、一生ピアノを友として大切にしていける為の技術的な基盤づくりと、ピアノに対する愛情、又は自負心などを育てたいという事でもあります。
中学生になっても、自ら時間を工夫して練習に向かう事ができ、自負心を持ち、コンペに参加出来るレベルを維持しているのであれば、一時期受験や就職、子育て等でピアノに触れない時期があったとしても、再びピアノに向かう事は、それ程大変なことではないでしょう。逆にそれ以前の段階で中断した場合は、私の知る限り、子供時代に折角習った事を殆ど忘れてしまっている方が多い様に感じます。
自力は一度に身に付くものではありません。コツコツと努力する習慣を身につけることがまず第一です。そしてすくすく成長していく為には、竹が節を作りながら伸びて行くように、時折学んだことをキチッと固めていく作業が大切です。
その節を作ることが、「コンペに参加する目的」であると私は考えています。もし竹に節がなければ、あのしなやかな強さは生まれません。節を作っている間は、一時期教本等が進まない様に感じられるかもしれませんが、曲を普段より問題意識を深く持って詳しく勉強する事が、技術を確実なものとし、知識を智慧に変え、その後の成長の為の礎となっているのです。
それらの事から導き出される、当音楽院における「コンペに参加するための条件」は次の通りです。(当たり前すぎて恐縮ですが・・・)
まず第一に、嘘でもいいから毎日1時間は練習しますと約束出来る事。次に頑張れば本番までに課題曲が弾けるようになる可能性が有る事です。
課題曲が弾けるといっても様々なレベルがあり、だからこそ結果に差が生ずる訳ですが、あくまでもコンペ参加を成長の為の機会とし、礎とするという目的に合致するならば、経験する事の価値をより重視するという考え方があっても良いのではないかと、私は思っています。
ただいくら経験が大切と言っても、そもそも楽譜通りに止まらずに演奏できる様になる目処が、現時点で立たないのであれば、コンペに参加する前に他に取り組むべき課題があるのは当然です。
あと「嘘でも良いから・・・」と敢えて書かせて頂いた意味は、地力を付けさせる為に、うさぎ型人間をカメ型人間に変えていくにはコンペは絶好の機会であり、例えスタート時点では練習の習慣化ができていなくても、参加することでもしその一歩を踏み出せるのであれば、今後に与えるプラスの影響は計り知れないものがあると考えての事です。
指導者によっては、本選もしくは全国大会に進出出来ないような生徒の参加は認めないという話も聞いた事があります。
その指導者にとっては、恐らく生徒が成長するチャンスよりも、自分の名誉の方が大切なのでしょう。
私も毎回、本選進出・全国進出は当然本気で目指してはおりますが、それ以上に拘っているのはスタート時点からの最終的な伸び幅です。
ある生徒にとっては予選で奨励賞をもらうことが他の生徒の全国出場に匹敵する価値がある場合も当然あるわけです。当事者同士がその事を実感し、嬉しく思い、感謝して下さるのであれば、参加して良かったのであり、私は十分満足です。
考え方を間違えないようにしたいものです。あらゆる機会を成長の為のチャンスと捉え、機嫌よく歩んでいく事です。くだらないプライドなどで躓いて、歩みを止めるべきではありません。
努力即幸福。何年か先、気が付いたら満更でもない処まで来ている自分を発見することでしょう。そしてその歩みを静かに振り返ってみましょう。きっと幸せで嬉しい気持ちに心が満たされるはずです。