2014.11.06
先週、日本クラシック音楽コンクールの本選が終了しました。当音楽院からは、小学5年生のSちゃんとYちゃんが挑戦しました。
夏に行われるピティナピアノコンペティションでは、それぞれのカテゴリーに適切なレベルの課題曲が設定されているために、難易度を競って技を見せるというよりも、いかに演奏の完成度を高め、音楽的に表現するかという所にエネルギーを注ぐ形になりますが、一方クラコンにおいては課題曲制ではなく自由曲制で、尚且つ15分程度までならカットなしで演奏できるということもあり、腕に自信がある参加者は、少し背伸びをした選曲が目立つように思います。
当音楽院の二人も、ピティナの時とはまた違った方針で、二つの視点を考慮してプログラムを組んで見ました。
一つは制限時間の長さを利用して、演奏曲数を多くしてみるということ。ピティナでは全国決勝大会は別にして、予選、本選共に2曲ですが、今回、3曲演奏してみることにしました。当然2曲の時よりも集中力が必要となりますし、ステージ上での構成力も必要となってまいります。
もう一つは、曲の難易度自体を上げて見るということ。ピティナではC級に出場している二人ですが、今回はE級のレベルに相当する曲目を含めてみました。
私自身の普段の考えとしては、あまり選曲に無理をせずに、どちらかというと一音一音大切に、丁寧に着実に学習を積み上げていくのが本道だと思って指導しているのですが、その様なベースを持ちながらも、今回の様に時には無理をさせてみるのも悪くないかなとは思っております。
完成度が若干落ちるリスクは伴いますが、難しい事へ挑戦する事によって初めて分かる事もあれば、破れる殻もあるのではないかと思うからです。
まず、最初に実感することは読譜力不足です。弾く以前に、レベルの高い曲は楽譜も普通は複雑で難しく、譜読みがはかどりません。そして譜読みが終わった次は、テクニック不足です。思うようなテンポで弾くことができず、ゆっくりでないと音を聴く余裕もなく、一番大切な音作りができません。
これらの現実に直面し、自らの足らないものを実感し、テクニックが乏しければ、又ソルフェージュ力が乏しければ、気持ちを込めて演奏することもままならないのだということが理解できれば、その後の練習の姿勢、勉強に対する動機付けにも変化が見られるというものです。
もちろん心を込めることが一番大事なのは言うまでもありませんが、その心を大切に表現するために、テクニック、その他のことがとても重要になるのだという事を、ごまかしてはいけないと私は考えています。
生徒たちは、そのちぐはぐな感じ、ギャップをなんとか克服したくてもがき、改めて真剣に教えを求め、困難と格闘していく中で、今まで自分の限界としていた殻を破り、成長していくのではないかと思うのです。だから難しい事への挑戦が、飛躍の時につながる事も多いのではないかと、私は考えているのです。
さて、今回の気になる結果ですが、Yちゃんは全国大会へ進出、Sちゃんは通過基準点の80点に僅か1点及ばず涙をのみました。ただ結果はともかく、素晴らしい演奏で、沢山の成長の跡が見られた事を、とても嬉しく、又誇りに思いました。
二人共、今月からはショパン国際ピアノコンクール in ASIA にも挑戦します。さらなる成長を楽しみに見守って行きたいと思います。