2013.12.29
『結果はともかく全力でここを越えたら、きっとまだ見たことのないモノが見えるはずだ。山の麓で見る景色と、少し登って見る景色と、頂上に登ってみる景色とでは違うであろう。だから登らないと。登れば見たことのない景色が見えてくる。じゃあその山を登ったらもうおわり? いや、もっと高い山に登りたくなる。俺は見たことのない風景を見てみたい。』
人気ピアノ漫画『ピアノの森』の中に出てくるフレーズです。私はこの言葉がとても大好きです。
さて、少し日が空いてしまいましたが、先日クリスマスイブに行われました、日本クラシック音楽コンクール中学生男子の部、全国大会の報告をさせていただきたいと思います。
当教室からは、高校受験本番まで1ヶ月を切っているにもかかわらず、3年生のM君が最後まで頑張り抜き、ベートーベンのワルトシュタインで挑戦いたしました。
最初に会場入りをしてまず耳に飛び込んできたのが、モニターから聞こえてきたショパンのスケルツォ第1番で、完璧に近いその弾きこなしに早速ド肝を抜かれ、その後ホールの中に入って聞いた2人目のプロコフィエフのソナタの凄さには、周りから見ていても可哀想になるくらい打ちのめされた様子で、早々に会場から避難し、レストランに昼食を取りに行きました。
あまりのビビリ様に急に落ち着きがなくなったM君を、私や家族で一生懸命元気づけ、とにかく失敗を恐れずに開き直って思い切り悔いのない様やってこい!と送り出したところ、多少のミスはあるものの、ほぼ力は出し切れた演奏ができ、私は満足していたのですが、本人は何故かしら演奏後暫くの間行方不明になったりして、人間味のあるところを見せてくれたりした一日となりました。
客観的な出来栄えとしても、拍手禁止のコンクール本番であるにもかかわらず、身内からではなく、自然に会場から拍手が起きたところを見ても、聴衆に何らかのものは伝わる演奏ではあったのではないかと思っています。(それまでは他の出演者に対しては、拍手がなかったのですから。)
第5位以上が入賞で、結果はそこには及ばず本人は少しがっかりした様子でしたが、本選の得点からはだいぶ上乗せできていましたし、力は出し切れていると私は思いましたので、私は満足しました。ガーシュインのラプソデイ・イン・ブルーをノーミスで弾く出演者がいる程のハイレベルな中で、自分もまた傍観者としてではなく、出演者として参加できていたこと、それも音高受験でもないのにこの時期まで頑張り抜くことができたこと、そして力を出し切れたのであれば、もう十分ではないかと思うのです。
本人は来年もこのコンクールに挑戦するそうです。長らく全国大会に出場することが彼の目標でしたが、今回見たことのなかった景色を見たら、さらに美しい山を見つけて登りたくなった様です。達成感と悔しさ、どちらも一生懸命努力してきたM君には宝物です。
ひとまずここを区切りに高校受験を頑張っていただき、また次の3年間ともに成長していければと願っております。今回はおめでとう、そして幸せな1日をありがとうございました。