2016.07.10
「なんかソーメンみたい。パスタじゃなくて。」
いったい何のことかと言えば、S君の演奏のことなんです…。
発表会まであと二週間ちょっとになりました。
だいたい仕上がっている生徒さんもいれば、まだ練習の余地がある生徒さん、色々ですが、S君は前者で、受験生にもかかわらずかなり練習をしているようでまずまずの出来上がりとなっています。
S君は決して器用なタイプではないけれど、こつこつと苦手をなくしていき、発表会で弾く曲もあと一歩で仕上がるほどまで上達しました。
譜面通りサラッとは弾けるのですが、なんだか魅力的でないのが難点といえば難点ですが…。
ゴンドラ漕ぎの歌を題材にしたその曲は、メロディーがとてもきれいでロマンチックな曲です。
S君の演奏には譜面上の間違えはないけれど、なんだかコクがないのでした。
ゴンドラといえばベネツィア、「アモーレ」の国、イタリアの乗り物です。
もう少し何とかならないか、S君に指導をしているうちに出た言葉が「ソーメンみたい」でした。
…猛暑のなか、食欲が無い時に食べるソーメンは、喉越しもよくサッパリしていて高温多湿な日本の夏にピッタリなソウルフードですね…
S君の演奏が「ソーメン」的とは、かなり飛躍した表現ですが、そこにはここ三か月のS君とのやりとりがあるからこその表現です。
レッスン中に、時々ゴンドラの話などをS君にしていました。
そこからイタリアの食べ物やイタリア語にまで話が広がりました。
親しい外国人から、日本語を初めて聞いた時、ボソボソ…ボソボソ…という感じがしたということを聞いた事があります。
イタリア語や、ドイツ語は音の強弱が日本語よりもはっきりしています。
言葉と音楽は密接な関係にあることを考慮すれば、そういった言葉を話す人たちの国で作曲された曲を演奏するには、やはり演奏にもなんらかのメリハリがないと魅力的な音楽にはならないのではないでしょうか。
S君にもそのあたりの話を何回かしましたが、まだパスタを食べてゴンドラに乗って歌をうたう(船酔いしそう…)感じじゃあなくて、屋形船でソーメンでも食べながら、隅田川の花火でも見てそうな感じ(いいねえ!)が演奏から抜けきってないのです。
物理的な作用でいえば、手の形が悪くてタッチが弱いとか、強弱の差があまりないとか、ペダルの踏み方がまずいとか、色々な事情でそういう演奏になっているのでしょう。
私が手本を弾いて「こう弾いてね」で済ませば簡単ですが、それでは無責任だし改善するはずもないので、その原因を色々と考えることになるのです。
色々とS君にはアドバイスをしましたが、ソーメンとパスタの溝が、来週埋まっているといいなあ。
今日のもう一つのトピックは、足載せ防止のシールドを椅子につけました。…と言っても段ボールを切って椅子に掛けただけですが。
ピアノの椅子の横木に足を載せて演奏している小さな生徒さんが沢山いるので、思い切って段ボールで隠してしまいました。
いつものように足を載せようとした生徒さんは、ちょっとびっくりしていました!
足はブラブラか、足台に載せて弾きましょうね!
★日記は7月9日分です。