2014.05.23
S君へ
今日は遠くから教室に遊びにきてくれてありがとう。
表情や仕草は初めて会った頃と変わらないのに、一言一言丁寧に敬語で話すS君を見ていると立派な大人になったな…と実感しました。
S君と初めて会ったのは確かS君が小学校2、3年の頃だったよね。
Y音楽教室の狭いレッスン室から始まったS君との付き合いが、こんなに長くなるなんて想像もしてなかったよ。
S君は学校では違う一面も見せていたようだけど、教室では物静かでクールな感じの男の子でした。
中学受験では県内の難関中高一貫校に合格して、お母さんが大変よろこんでいらしたのもよく覚えています。
ピアノは練習を熱心にやっていたとは言えないけれど、とにかく休まずに教室に通っていたよね。
サッカーやテニスをやって楽しい学校生活を送っていると思っていたのに、高校2年生の時に心が不安定になって病院でカウンセリングを受けている、と突然打ち明けられた時には凄くびっくりしました。
それからのS君は暗い道を一人で彷徨い歩いているようで、先生も内心どうしたらよいか悩みました。
突然レッスン中に涙ぐむ日もあれば、真っ二つにへし折った携帯電話を見せられた日もありました。
それからの3年間、先生はS君が望んだように一緒に他愛無い話をして、ひたすら弾き続ける「サイン」と「明日への扉」を聞いてあげることしかできなかった。
そんなどん底状態から自力で脱出して高校と塾の先生になったS君の強さは凄いね。
今年は国立大学の医学部に生徒さんを送り出すこともできたんだね。
ファイルから大事そうに出して読ませてくれた、合格した生徒さんからのお礼の手紙、先生も嬉しかった!
S君は辛い経験をした分、人の心の痛みがわかる優しい、そしてときには厳しい先生になれたんだね。
それと「大学なんてどこの大学でもいいんだよ。大切なのは卒業した後なんだから」と生徒に言っている、と言ってたね。
塾の先生とは思えない発言だけど、受験で頭がいっぱいいっぱいになっている生徒には、勇気と希望がもてる言葉だよね。年齢がS君とそう離れていない高校生にとっては、等身大の先生の言葉はきっとすごく心に響くね。
今日はまた「サイン」と「明日への扉」を弾いてくれたね。耳にタコが出来るほど聞いた曲だけど、懐かしかった。ピアノを練習する時間が全く無いと言っていたけど、たまにはピアノを開けて好きな曲でも弾いてみたら?
気分転換になると思う。
それと生徒の指導で悩んでいたけど、世の中には色々な人がいるから良かれと思ってした事が裏目にでたり、理解されなくて悔しい思いをすることも、これから沢山あるだろうけれど、いつも信念と誠意を持ってS君らしく指導すればいいと思うよ。それと自己満足じゃ困るけど、自信を持つことも大切!
今日は高校時代に通った保健室…保健室登校なんて言葉、S君から習ったよ、先生。…も訪問したんだよね。
「墓参り」に行くような物、なんて言ってたけど、久しぶりの保健室はどうだった?
保健室は昔の自分と向き合う過去への扉、それとも明日への扉だったのかな…
塾で出世したら、何料理でもおごる…ってメールを一昨年先生にくれたのを覚えてる?先生はそのメールを保護してあるからね!!できたら、本場でおごってもらいたいな。楽しみにしているよ!
ではまたね。体を大切に過ごしてね。
今日のトピックスは手紙風にしてみました。S君は二年ぶりに教室に遊びにきてくれました。社会人1年目で色々大変でしょうが、頑張って欲しいです。