2020.11.30
土曜日の午後、Yちゃんのレッスンの時…何かの拍子で窓の方に目がいきました。
…ん?窓に何かが付いている!…
3センチくらいの長さの茶色の細長いものです。
何かいやな予感がして、それでもそれを否定したくてYちゃんに話しかけました。
「Yちゃん。これ何?鳩の糞?それとも…」
私の問い掛けで窓の側まできたYちゃんは、その物体をじっと見ました。
「…違うね。」
そのYちゃんの声に「やっぱり!!ミノムシだー!気持ち悪い。頭動かしてるし!」
そう興奮気味に言う私の顔を見て笑うYちゃん。
「ここ3階よー。何でこの窓にミノムシがいるの?何か腹が立った。よりによってなんでここの窓にっ!!!」
先生の怒りように苦笑いするしかないYちゃんです。
「あとで箸でつまんで、ほうり投げてやる!!で、Yちゃんの頭にペッとくっ付いたりしてね。」
そう私が言うとYちゃんは「私が下を通る時は投げないでー!」と言いました。
3階まで上がってきたど根性ミノムシですが、汚い袋状のものから頭を出して、その頭を左右に振りながら更なる高みを目指す姿は感動も何もなく、ただただきもち悪く、「私の」窓に貼り付いているのが腹立たしいのでした。
Yちゃんのレッスンが終わり、Rちゃんが来ました。
「Rちゃん、窓にミノムシがくっ付いてて、気持ち悪いから取るね。」
Rちゃんが窓のところまできてミノムシを眺めました。
私は急いで、キッチンに割箸を取りに行きました。
ベランダに出て、恐る恐るミノムシを箸で摘まむと、思いのほか簡単に取れました。
箸に挟まれても、依然として頭を左右に振っているミノムシ…。
放り投げようと思って外を見ると、3階は結構な高さ…。ミノムシが転落死しないかな…。
困惑する私。
教室の前の道では、Yちゃんが笑いながらこちらを見ています。
その横に並ぶお迎えのお父さんが、私に挨拶をされました。
…不審そうな表情で…気のせいかもしれませんが。
放り投げるのを少し躊躇して、下にいるYちゃんに「このミノムシどうしよう?」と問いかけました。
マスク越しの声は通らないし、口元が見えないので、何を言っているのかわからない様子です。
すると後ろから「投げちゃえば」と声がしました。
振り向くとRちゃんが、窓の隙間から顔を出していました。
迷っている時に力強く助言されると、エールを送られたような気持ちになります。
教室の前の狭い生垣にでも着地して欲しい…そんな願いをこめて思い切りミノムシを投げました。
向かい風に煽られて、ミノムシはマンションの庇の上に落ちました。
私は緊張から解き放たれました。
道路で、Yちゃんが笑ってます。
後でRちゃんが「ミノムシ、初めて見た…」と呟いてます。
ミノムシが庇から這い上がらないことを祈りつつ、Rちゃんのレッスンを始めました。