2016.10.19
また夏に戻ったかのように暑い日でした。
今日はお休みしていた生徒さんが久し振りに教室に来ました。
Yちゃんは体調を崩し入院したあと、2回レッスンをお休みしました。
Yちゃんを待っていると、
インタフォンが鳴りました。
Yちゃんのお母さんの顔がモニターに写りました。
教室の玄関に出て待っているとドアが開き、お母さんとその陰に隠れるような感じでYちゃんが立っていました。
Yちゃんは見たところ元気そうですが、いつものような笑顔は無く暗い表情です。
お母さんのお話では、まだ体調は回復していないそうで、学校から帰ってくると疲れ切っているとのことでした。
病気の症状がストレスとなり、それが疲れとなりクタクタになってしまうようです。
ピアノを練習する元気もなく、練習しないで教室に行くのは気がかりで、それが更なるストレスになっている、だから体調が戻るまでピアノはお休みしたい…。
そんなお話をお母さんから伺っているあいだ、Yちゃんはお母さんの横で寂しそうな表情で立っていました。
Yちゃんはピアノが大好きで、いつも練習を沢山して教室に来ていました。
出来ないことは克服したい、という負けず嫌いの頑張り屋さんです。
そんなYちゃんが練習ができないなら、ピアノを辞めたいというのは、彼女の性格を考えれば理解できないこともありません。
でも練習しないからではなくて、練習できないから大好きなピアノを辞めてしまうのは、何か納得できません。
いつも「練習してね」と言っている私が「練習しないでいい」と言うのも変ですが、「練習」の為にYちゃんからピアノを遠ざけるのはもっとストレスになりそうな気がしました。
入会当初からピアノが大好きで、新しくピアノを買った時はずっとピアノを弾いていたというYちゃん。
発表会の時も音の出し方までこだわり、なかなかできなかった脱力や、腕や手首を使った奏法を、出来るまで辛抱強く何回も何回も、手が痛くなるまで練習していました。
本当にピアノが大好きなんだな…そんな感じを受けるYちゃんだから、出来ない練習は無理にしない、出来る事を続けて、体調の回復を待てばよいのでは…と思えるのでした。
「じゃあ、練習をしないで、教室ですぐに弾けるような曲をしばらく練習してみませんか?例えば簡単な連弾だとか。」
お母さんに提案しました。
Yちゃんの表情が緩み、お母さんの顔を見上げて「連弾したーい!」と言いました。
お母さんもピアノを辞めてしまうことに関して否定的だったようで「私も、ピアノは続けた方が良いのでは…思っていたんですよ。病気もピアノの音を聞いたりしていれば良くなるんじゃないかと…。」
お母さんも嬉しそうです。少し前向きになったYちゃんにホッとされたのかもしれません。
お話合いでレッスン時間は短くなりましたが、次の生徒さんが来るまでまだ少し時間があります。
教室の楽譜棚から連弾の楽譜を引っ張りだして、Yちゃんに曲を選んでもらいました。
「よろこびのうた」の楽譜を見ながらベートーヴェン知ってる!とYちゃんが言うので、少し練習して二人で合わせて弾いてみました。
もっと弾いてみる?と聞くと「うん!」と元気よくYちゃんは言いました。
数曲弾いた後、Yちゃんに次のレッスンはどうしたいか聞いてみました。
「家での練習はきついから、また来週ここで弾けるような曲を、先生は選んでおけばいい?楽譜は渡さない方がいいよね。」
するとYちゃんは迷わず「うちで少し練習してみたい!」と言いました。
「じゃあ次回のレッスンの時に楽譜を渡すね。」
少し明るくなったYちゃんにホッとするとともに、無理をしないでのんびり、ほどほどに頑張って、早く元どおりのYちゃんになって欲しいと心から思いました。