2015.12.08
もう何年前のことか?と思うほど
何年も前のことです。
カジュアルなコンサートがありました。
その方は私もお名前を存じ上げている方で、
コンクール経歴を拝見すると実力は確か、
でも今はピアニストとしてよりも
作曲や指揮のほうを中心に活動なさっている50代の男性の先生でした。
カジュアルにクラシックや音楽を楽しもうという趣旨のステージで、
幼い娘も退屈せず、場内も笑い声と歓声で盛り上がっていました。
その日はずっと指揮とトークだけだったのですが、
終盤になり、いきなりアンコールをピアノソロで弾き始めました。
ショパンの、難しくて、でもとても人気の曲。
___彼の演奏は、それはたいしたものでした。
観客をひきつけてやまない情熱がこちらに伝わってくるし、
その音楽の熱さはそれはもうわくわくするものでした。
同時に、テクニックの不備は山ほど・・・!
ミスタッチはあるし、聴かせどころのスケールは大きく抜けるし、
だいじょうぶかな、心配・・・とハラハラ見守っておりましたが、
さすがですねぇ。。。
最後の一音まで全くひるむことなく、そして大変に魅力的に弾ききりました。
___すごーい。。。。
こういう経験は初めて、と言っていいかも。
これだけミスだらけで大きく抜けているのに、音楽の力そのものは全く色あせず、
それは立派な演奏と言う印象しかありません。
この方は、
ピアノや指揮などという枠を超えて、“音楽”そのものをやってらっしゃるんだなぁと
つくづく感じ入りました。
もちろん、
これがコンクールなら評価がついてくるかどうかは何とも言えませんよ。
音大受験なら不合格でしょう。
でも、
非常に魅力的な演奏と音楽そのものが、ミスをものともせずそこにありました。
時々ふと、あの時のことを思い出します。
私は先生だから、生徒にミスしていいよと言ってはいけないんでしょうが、
このレベルならミスなんて何の意味も持たないと感服しましたね。
ここには何があったのか?
演奏者の音楽の命、音楽の心がはっきりと存在し、
それを十分あじわったからこそ観客は満場の拍手を贈り、
私は20年ほど前の記憶が今も強く、そしていい記憶として残っているのでしょう。
ノーミスで完璧に弾けばそれはすごいけれど、
強く輝かしい印象と記憶に残る演奏はそうあるものではないでしょう。
あの日のステージはとっても貴重なものだったんだなぁと、
今もなお時折思い出すのです♬