2014.08.03
建物の中を上へ上へと廊下をすすみ、一番高い所まで行って、小さな石庭の前で一休み。「こんな高いところまで来たんだ。」振り返ると、本堂のりっぱな屋根が斜め下に見えます。このお寺は禅寺なので、石庭です。するとその時、背後から何かがやってくる気配が・・・そんなはずはありません。背後には何もありません。と思ったら、風がふうっと吹いてきました。気配と感じたのは、遠くから少しずつ聞こえた木々の葉の音と、首をなぜていった風でした。サラサラっと葉が鳴って、それが少しずつ大きくなり、ザワザワっと近くの木々の葉を揺らします。その日は風もあまりなかったせいか、ふわっ、ふうっと後ろから首をなぜていった風が、本当に何かがやってきたように感じました。休日なのにお客さんも少なく、人の話し声もしません。そんな細かな音もしっかり聞こえていたんですね。
私たちは、奥山を後にして、次は伊井谷のお寺に向かいました。同じ禅寺です。私は自分が幼い頃、母に連れられて何回も来たことがあります。その頃はまだしっかり公開されていないで、母の知人のところに用事で伺ったのですが。お寺の鴬張りの廊下は、小さい自分にはとても不思議でした。歩くと音がキュッキュッとして、おもしろくて、わざと何回も行ったり来たりして、歩いた記憶があります。ここは小堀遠州作の庭園で有名ですが、池があっても滝には水は流れていません。表の石庭もすばらしく、整っていて美しい。静かで、やはり木々の葉がザワザワっと動く音が、渦をまくように私たちを包み込んでくれます。堂内と外は平面でつながっていて、境界がないように感じるのがいいのでしょうか。
この日は、思いっきり日本的な雰囲気に浸りました。その間一度もピアノの音を思い出したことはありませんでした。自宅に戻り、ピアノに向かうと、大きな音、豊かな響きに圧倒されました。