2013.01.29
ある音大出身の生徒が時々レッスンを受けにやって来ます。
彼女はベートーヴェンとブラームスを得意とし、ライフワークとして二人のソナタ全曲をマスターすると意気込んでいます。
その反対にショパンはまどろっこしくて嫌いだと言い、ちっとも勉強しようとしません。
ある時、ベートーヴェンのソナタ一楽章を弾いていた彼女は、第二主題に入る前の属七のアルペジオを淡々と進んで行きます。
注意をすると「先生、ここってリタルダンドをするとショパン的になりませんか?」と言います。
私は「構成がしっかりとした古典派のソナタの一部分だけリタルダンドをしたからといってロマン派的にはならない」と2つの弾き方を示して伝えました。
ルバートで表現するショパンと、構造が明確なベートーヴェンとでは、音楽のあり方が全く違うはず。
私は、それがバロックや古典派であっても、人間が生み出した音楽には躍動感や悲壮感があって然るべきと思っています。