2016.09.18
高校1年生の秋、芸大の先生のレッスンを受けるため、成城のご自宅に伺った際、丁度お帰りになるピアニストの中村紘子さんを見かけました。
先生は、
「庭にある無花果を毎年楽しみに来てくれるのよ」
と、私にも10個程の無花果の実を分けて下さいました。
でもまだ子どもだった私は、当然無花果などに興味もなく、
「重い楽譜の他にこれも持って帰るのか…」
と気が滅入ってしまいました。
美しいピアニストを見かけた嬉しさが、この無花果によって水をさされたような思い…
今思うと、あの頃の先生の優しさを素直に受け入れられなかった自分が情けなくなります。
そしてこの季節、店先に並ぶ無花果の実を目にすると、今はこの世にいない御二人を思い出してしまいます。